【作業日誌】Hofner President Bass ネック・電装リペア

こんにちは。
ギター工房 ミラージュリーフクラフトワークス 店主の永野です。
今回は鹿児島県鹿児島市にある「WALKINNSTUDIO!」の代表、野間さん所有のHofner President Bassのリペアを行ったので紹介します。長いですが最後まで読んできただけたら幸いです!!

霧島市国分にて行われた「WALK INN FES! 2021」にて、当工房製作のギターを出演バンドの方に使用していただいたり、自身がボランティアスタッフ「ですです隊」としても参加したのがきっかけでご挨拶させていただき、そのつながりで当工房へリペアをご依頼いただきました。ありがとうございます。

Hofner President Bass 入庫時
貫禄ありますねぇ、、

「これ直せる??」みたいなフワッと持ってこられたのですが、、年季の入ったヴィンテージベースでした。すごい打痕があるわけでもなく、かといって使い込まれた感が随所にあってめちゃくちゃカッコいいです!エイジドもいいですがやっぱ本物のヴィンテージはシャレオツ~

FenderやGibsonに関しては人並みに知識はあるとしても、ヘフナーは実はあまり知らない、、のでリペア前にちゃんと調べましたが、このPresident Bassがレギュラーモデルとして生産されていたのが1963年~1967年だそうで、モデル最終年としても50年以上前の個体となりますね。Presidentシリーズのギターは見たことがありますがベースは初見でした。

ヴィンテージの楽器を扱うにあたって何が気を遣うかというと、「壊すかもしれない」という点だと思います。

壊すかもってそんなんどの楽器も一緒やんって思われるかもしれませんが、例えばネックのロッドとかでもネジが固いものが多く、もう回らなくて固いのか、もしくはネジ部でサビが固着してて回んないのか、等の判断も求められますし、前のリペアマンがロッド破断寸前まで締めてたとしたら当方がちょっと触っただけでロッドが折れる、、なんてこともあるかもしれません。

んで、万が一折れたとしても近年の楽器でしたら指板をはがしてロッドを仕込み直してタッチアップして、、と直せるのですが、ヴィンテージでそこまで大規模な修理を行ってしまうと経年変化で得た楽器が持つ音の良さも変わってしまうかもしれませんし、何より「資産価値」が大幅に下がってしまう可能性が大です。(何が何でもオリジナルが良いってわけではありませんが)

なので、この手のヴィンテージ物を扱う場合は普段より特に注意して作業します。(普段もちゃんと気を付けてます念のため)

症状としてはネックの順ぞり、電気系統(ポット部)の不良とのことでお預かりしました。

弦高、、!!
ネックが弓なりに順反ってます


とりあえずチューニングして弦高を測ってみたら最終フレットで8mmくらい、、こりゃ弾きにくいというかピッチが合わんですね。で、ヒール部を見るとパックリ割れてました。

ヒール部でネックが割れています

ここは弦のテンションもかかりますし木目のせいでどうしても割れてしまいますね、、同じヘフナーでヴァイオリンベースも見たことがありますが同じような症状が出てました。経年でここが割れるか、ジョイントが浮くかのどちらかが多いと思います。

で、まずはここの割れを接着するのですが、写真データが見つからず、、文章ですいません。
割れ自体はクランプしたら密着するので、内部に大きなささくれやごみはないと判断し、そのままノリを流し込んで接着を行いました。そのままとはいってもできる限り割れ面の掃除は行っております。

次はネック反りのリペアを行います。

ロッドを回したところ、バッキバキに締め切っており逆ぞり方向へは矯正できない状態でしたが、緩めると順ぞり方向へは動きました。この手のネック修理だとアイロンで熱をかけて強制的に適正位置まで反らせるのが多いですが、今回はフレットの打ち替えによる修理を行いました。

正確に言うと、「現在のフレット溝よりタング幅が広いものを打ち込み、突っ張らせて逆ぞりさせる工法」にて処置しました。指板調整もします。

なんとなく図解してみましたので説明します。

リペア前の指板断面

上はリペア実施前のフレットが打ち込まれた指板断面図です。ベース弦のテンションに引っ張られ順反りの状態ですが、50年以上の経年変化による「木部の痩せ」も順反りの要因の一つだと思います。
(青の両矢印は指板部の痩せによって縮んでるイメージ)

次はアイロンによる熱で反らせる工法を行った場合です。

アイロンによるリペア時のイメージ

ネックアイロンによる熱で逆反らせる方向にテンション(①)をかけます。そうすると指板が伸びる方向に動き、それに伴い指板のフレット溝も開く方向(②)に動きます。そうすると③の箇所でギャップが生じてしまい、フレット浮きやネックの反りが元に戻ってしまう要因となる可能性があります。特に今回のベースはネック幅も狭く厚みも薄く、熱による矯正を行っても上記のギャップも相まって多分また戻ってしまう可能性が高いなーと思い見送りました。
実際はタング部に返しがついていてそんなに簡単にフレットが抜けたり浮いたりはしないですが、上記の通り木部が痩せていますので若い個体よりは影響がでかいと考えます。

次は今回実施したフレット打ち替えによるリペアの図解です。

ワイドタングフレット打ち込みの図

現在のフレット溝の幅(④)より広いタング幅(⑤)のフレットを打ち込み、指板に対してグッと突っ張るテンション(⑥)をかけます。これをすべてのフレットもしくは特定の反りが気になる範囲のフレットで行い、逆反らせるテンションをかけ(⑦)、ネック反りを矯正します。

指板の溝幅は0.57mm、今回打ち込むフレットのタング幅は0.63mmで0.06mmのオーバーサイズになります。1か所だけだとわずかですが、例えばこれが20フレット打ち込むとなると0.06*20=1.2mm突っ張ることになります。0.65mmまではカタログにあったと思いますので、これらを駆使して反り量を調整していきます。

アコギで有名なMartin社の古いモデルには、ネック内にアジャスタブルロッドではなくスクエアロッドが仕込まれており反りの調整ができないので、リペア時に上記のタング幅の広いものを打ち込んで反りを調整したりします。



少しでもロッドの調整幅を持たせたいため、ロッドを締めた状態で指板調整を行ってフレットを打ち込み、それに伴い逆ぞりになりますがロッドをリリースさせた時にちょうどいい具合になるようにし、締めても緩めてもロッドがどちらにも動くようにします。

作業進めていきます。。

こうやって作業しながら撮るの難しいんですよ
フレット抜き完了~
濃くなっているところが凹みです

フレットを抜いて指板調整していきます。
指板調整を行うとサンドペーパーが当たる所と当たらない所で色が変わって見えます。ネックのジョイント部で起き上がり気味なので、折れの底が当たりにくいです。ちょうどいいようにします。

指板調整完了

指板調整完了です。フレット溝は専用のフレットノコで挽き直してあります。
フレットを打っていきます。

作業途中は撮れませんでした
エッジ処理も行っております
完了~

フレット打ち込み完了です。16フレット以降はボディ上にフローティングしててそのまま打ち込めないので、治具を使って打ち込んでます。

よく見ると床にキムワイプ落ちてますね、、、

最終的に弦高は4弦側で約3.0mm、1弦側で約2.4mmまで下げました。
新品ほどではないですが、順方向、逆方向共に調整幅を持たせることができました。

次は電装系に取り掛かります。
音出しするとリアVol回転時にガリとノイズがひどいのでポット交換を行います。ちなみに箱物の電装を引っ張り出す時は、シャフトにひも状のものを括り付けとくと元に戻す時に楽です。

古き良きポット
交換完了です

この手の古いポットは知見なかったので配線を目視とテスターで判別して交換しました。勉強になりました。

んで交換して意気揚々と音出し!するのですが、ノイズもガリももちろんないんですが音も聞こえません。あれ?
ドライバーでポールピースを叩いてもまったくの無音です。フロントはちゃんと聞こえます。
??????な状態でとりあえずリアピックアップにテスターをかませたところ、1.8MΩの数値、、ここに来てPU断線ですかと変な汗が出たのを覚えています。

とりあえず取り外して単体にして、いろいろ測ってみますがどれも1MΩ以上を指しており、温めたり叩いてみたり振ってみたりしてもそこまで変わらなかったので、内部の不良と判断し分解しました。

カバーを外した内部
不具合箇所はどこか探し中

コイルを構成している銅線の腐食かもしくは断線かなぁと思いましたが、外に引き出すリード線との接続部に青っぽいのが確認できましたので、腐食によって抵抗が生じてしまったようです。ここら辺あせってて写真無くてすいません。
腐食部を除去し新しくリード線とハンダし直して修理を行いました。修理後、適正な抵抗値になったことを確認しました。
電装系も問題なくなったことを確認し、リペア完了です。

Hofner弦の飾り糸(緑)カッコいいですね
弾きやすくなりました
0フレットも適正なやつに打ち換えてます
作業完了!完成!

リペアにより弾きやすくなり、出音も正常になってバッチリです。

ちなみに、今回の事例を含めリペア日誌として記事を投稿していますが、実施しているのは症状を改善させるために行う数ある作業のうちの一例であり、これが正解でこれは間違っているというものではありません。リペアマン・クラフトマンの数だけやり方もありますし、今回はネックアイロンは使ってませんが、ネックアイロンを駆使して最適な状態にリペアされる方ももちろんいます。上記ではアイロン使用によりギャップが~とネガティブに書いてますが、その生じたギャップに対してフレットを接着したりフレット打ち替え前提で作業されてたりするので、これが正解でこれは間違っているというものではありません。(大事な事なので2回言います)

作業するにあたり、多分なんとなくではなく「ここをこうすればこうなるからこれをする」とちゃんと理由がある作業を心掛けています。そしてもちろんこだわりは持っていますが固執はせず、他のやり方がいいなと思えばどんどん取り入れていきます。ほかの方の作業手順を見てみたり、海外のルシアーフォーラムも見たりして良さげだなと思えばどんどんパクります参考にします。逆に間違いを指摘されてその通りだと自身が思ったら改善します。(間違ってないと思ったら聞き流して無視します)
そういうのも含め日々改善に取り組みつつ、皆様の為に力を発揮できればと思っております、、!!

野間さんと撮影。自身のドヤが酷くてすいません、、

※写真撮影時のみマスクを外しており、感染症対策を行って営業されています。

同じような症状でお困りの方、はたまた機種は違うけど弾きにくい、音が変、、とお悩みの方、当工房へお気軽にお問い合わせくださいませ!
よろしくお願いいたします。