【作業日誌】Marshall 1960A キャビネット修理+α
こんばんは。Mirage Leaf Craftworks 店主の永野です。
久しぶりの投稿ですが、工房内で試奏用として使用予定のギターアンプとキャビネットを購入した際のドタバタを記したいと思います。セパレートタイプのギターアンプを使用されてる方に有用な情報だと思いますので、読んでいただけましたら幸いです。
※めちゃくちゃ長いです
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先日、某オークションサイトにて「Koch Powertone II」を落札しました。リバーブつまみが裏にある初期型?だと思うのですが、相場よりだいぶ安く購入できました〜
人間、ヘッドアンプを購入すると次はキャビネットが欲しくなるもので、某楽器販売仲介サイトで掘り出し物を見つけ購入しました。スタジオにて使用していたキャビネットを閉店に伴い格安で販売しますとのことで、こちらも相場よりだいぶ安く購入できました。
キャビネットが到着し、梱包材をむき散らかしてスピーカーケーブルを接続しようとしたらジャックごとめり込みます。キャビネットを倒したかもしくは壁に押し当てたか。どうやら陥没しているようでした。
一抹の不安がすごいよぎりますが、一応ジャックは接続できるのでつないでみて、待望の音出し!です!が、やはりというか音が出ませんでした。まぁまぁ想定内です。だいぶ安かったので。でも商品ページに音が出ないとかジャンクとかは書いて無かったよ?
とりあえず破損状態は明らかなので修理します。
インピーダンスに気を付けながらいろいろ接続を試してみたところ、16ΩInputはMONO、STEREO共に完全に死んでおり、4ΩInputでSTEREOだと音が出るようでした。でも接続位置と出音が左右反対、、ん?よくわからんぞ、、ってことでバラします。
基盤部をひっくり返したら、何か半田が怪しいです。(センターのスイッチ端子部と右上のジャック端子部)
とりあえず後でコテを当てるとして、できる範囲で清掃を行ってみました。
怪しいって言ってたジャックの端子部は、なんとパターンが浮いてました。このままハンダを流してもキャビネットの振動で何か不具合が起こりそうなので、レジストをちょっとはがして、、
はがしたところにハンダ付けしました。
コテで端子を一通り当て、導通確認を行ったのですが、不安定です。Tipが導通したりしなかったり、、あれ?
気持ち悪いのでジャックを取り外して確認します。すると、、
なんと端子がちぎれてました。バックパネルが割れていた状況からみて、押し込みの力がジャックにも加わったのでしょうか。
反対側は、、
なんとなんと端子が焦げてました。
パワーアンプから出力された大電流が破断した端子部にて通電したりしなかったりでスパークが発生し、焦げた感じでしょうか(想像ですが)
焦げの範囲からみて、結構バチバチに飛んでたのでしょうかね。基盤部も焦げてました。怖ぇ〜
このような場合は問答無用で部品交換なのですが、あいにくPCB端子ジャックの在庫がありませんでした。すぐにでも音を出したいので、線径の太いスズメッキ線で端子を増設して応急処置します。もしお客様御依頼分でしたら、必ず新品部品にリプレースします。
導通確認し、基盤部のリペア完了です。
キャビネットに組み込み音出ししたのですが、音は出るけどなんか変、、
「STEREO」では4発から音が出て、「MONO」だと片側しか出ない。パターンを目で追ってみますが、スイッチの表記と動作が逆??最初に撮った通りの向きに取り付けたはずですが。で、ひっくり返して取り付けたのですが、ばっちり動作しました。
考えるに、「倒したかなんかでジャックが陥没」→「ジャック端子部ちぎれて音出ない」→「お店側が修理してみるけど基盤を反対向きに取り付ける」→「自分がぐりぐり抜き差ししてとどめを刺した」って具合でしょうか。
というか、安いんであんまり文句言っちゃいけないとは思うんですが、商品販売ページには外装の汚れや破れは記述してありましたが、2発しか鳴りませんなんて書いてなかったわけで、、発送前に動作確認しますと書いてあったのでそこはちゃんとしてほしいなと。楽器販売では超大手です。全国にお店あります。
あと、仮に音の出る出ないを値段のせいにして、仕方なく音の出る範囲で使用しててキャビネットが燃えたら(FH)こっちの責任になってたかもしれないという怖さの方がすごいです。燃えたらってのは最悪パターンでよっぽど起きないとは思うのですが、ただ熱で変色するのとスパークで焦げるのでは、個人的に後者の方が怖いです。
あとバラシてわかったのですが、スピーカーユニットが1発別なのがついてました。ちょっと損した気分です。
安いものには何かあるんですね。勉強になりました(毎回繰り返してますが)
さーキャビネットも修理したし音出し!!めっちゃいい音!クリーンがすごい、ハリがあって好み、、
あ、あれ?どんどん音が小さくなる、、というか音量がめちゃくちゃ不安定です。
これはアンプ側も掴まされたか、、と頭を抱えつつ、原因を探ります。
真空管かな?と別のアンプから真空管を移植したりして動作確認しますが、症状は変わりません。音は出るけど音量が不安定。症状が変わらんてことは真空管ではない??接触の不具合ぽいですが。
とりあえず中を開けてみますが、ぱっと見て電解コンデンサも綺麗だし燃えてる部品もない。
すぐにでもガッツリ音出したいのに、次から次へと出る不具合。アンプを修理のために分解するのは結構手間で、仕事でもないのにバラすのめんどくさいな、、と意気消沈してたところ「音量の不安定さがスピーカーケーブルの不具合で発生する場合があり、交換で改善した」という情報を得ました。
今回使用したスピーカーケーブルはBeldenの#9497で、完成品を新品で購入したものです。粗悪な格安ケーブルとかじゃないし、ちゃんとしたケーブルメーカーのだし、不具合は考えにくいけど、、一応確認を実施します。
すると!
なんと断線を示す「×」マークが出てます。正確には、導通したり断線したりがケーブルの曲がり具合で変化してました。
新品なはず。安いものを掴まされたとかではないのに。これはムカッとするよりびっくりのほうがでかいです。市販のケーブルで初期不良は初体験でした。
蛇足ですが業務の都合上、新品のピックアップをよく取り扱いますが、ピックアップは初期不良が結構あります。なので開封したら導通と位相の確認は絶対します。
話を戻して。
ケーブルを動かして不具合箇所を探ると、プラグカバーから出てる線材のつけ根で断線してるぽい?てことは繋ぎ直せば音出るよね?もうここまでくると早くちゃんと音を出したくて返品なんて待ってられません。直します。
プラグ内部の熱収縮チューブをむきます。ハンダ除去してプラグ取って、、ってちょっと待て、何かおかしくない?
この投稿で「なんと」を使うのが何回目かわかりませんが、なんとカシメ部が被覆を貫通しているようです。オレンジと黒の両端子間をテスターで確認したところ、ばっちり導通してました。
↑これはもうちょっと見やすいかもしれません。
改善策として、カシメ部のところだけ熱収縮チューブを個別に通し、さらに端子部を覆うようにチューブを通します。あまり強くカシメられていないので、ハンダ部が引っ張りや振動の影響を受けやすくなるかもしれませんが。(ただ挟み込む荷重はかけています)
結局、両端ともカシメ部が食い込んで被覆を破り、ショートしてました。これは新品で購入したものなので、文句言っていいと思います。確実に初期不良ですが、収縮チューブを剥いたら保証なくなるのかな?何か問題あるならその時点でお店に言わないとですね。
繋ぎ直した分だけ短くなってしまいましたが、完成しました。
いよいよ待ちに待った音出し!
めっちゃ音良い!気持ちいい!不具合をなんとかFixできたので喜びもひとしおでした。一通り時間をかけて試奏し、不具合なく動作することを確認しました。ヘッドアンプ壊れてなくてよかった。
イライラと達成感が相まってめちゃくちゃ長文になってしまいましたが、改めて下記教訓を学びました。
・安いものには裏がある
・新品でも必ず初期不良を疑え
これらを心にとめて日々業務に努めたいと思います。
今回修理したアンプは、工房内に設置しギター試奏用として使用します。
また、上記のような症状でお悩みの方、また修理等をご希望の方はお気軽にお問い合わせくださいませ。なおアンプにつきましては、軽度であれば当方で修理可能ですが内部的な不具合の場合は外注修理となります。
何はともあれ症状が出てお困りの方、重ねてではありますがお気軽にお問い合わせくださいませ。