【作業日誌】Gibson J-45 ヘッド折れ修理+ブリッジ接着

こんにちは。
ミラージュリーフクラフトワークス 永野でございます。
ご依頼後に実際どんな作業を行っているかを紹介したく投稿しているのですが、毎回長くなってしまうのが悩みです。
時間を確保の上ご覧いただけますと、最後まで美味しく閲覧して頂けると思います。
※今回のは過去にinstagramに投稿したものに追記し再投稿したものです。

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今回リペアを行ったギターは、霧島を拠点に活動されている若松翔平さんのGibson J-45 です。
ヘッド折れですが完全に分離しており、かつヘッドトップ面は細かく粉砕しています。
一度別のお店で修理をされているのですが再度剥離してしまい、当方が修理を担当する事になりました。

結構バキバキに割れてるんですが、大きな問題が一つあります。

古い接着剤がガッツリ残っており、間に挟まっていることで密着ができない状態です。
まずはこれらを綺麗に除去するところから始めなければなりません。

かさぶたみたくなってます

パーツを外して分離させ、古い接着剤を除去します。取り漏らすと密着しませんし、逆にほじりすぎると空洞が多くできてしまいこちらも密着できなくなる原因となってしまいます。
デザインナイフだったり、千枚通しだったり、採掘(?)に使えそうな尖ったツールを使用します。

除去完了しました。

分離した破片達もきれいにしました

手で挟んでみてちゃんと密着するのを確認します。
「グッ」と力を入れて密着するのはNGです。軽い力で「パフッ」と組み合うようにします。

見にくいですが「パフッ」と組み合っています

密着するのを確認したらノリを塗りクランプして本接着します。ここの出来栄えが成功かどうかのカギですので、めっちゃ重要です。
ヘッドを挟み込むように締めるのと同時に、ヘッドの先端からボディエンド側へ押し付けるような荷重も掛けます。これをしないと接着面がノリで滑ってしまい、ずれてくっついてしまいます。
接着時は毎回時間との勝負なので、接着中はどうしても写真が撮れません。

黄色い紐にボディエンド側への荷重が掛かってます

ヘッドを接着したら、ヘッド裏に補強材を入れる溝を掘ります。

今回のリペアでは、「ヘッド接着+補強材」で行いますが、ヘッド折れの破損状況により、ボリュートの作成有無・補強材の有無・形・溝を掘る深さ・場所・掘る角度・補強材の種類等を変えています。
綺麗に割れて、時間も経たずすぐリペアできる状況であれば、再接着のみで済む場合があります。
今回のは破損から時間が経っており、古い接着剤が残ってたりヘッド表面も細かく割れてたりしたので、補強材有で対応しました。

溝にはめ込む補強材を作成します。今回はハードメイプルを使用してます。色合わせがシビアな場合はマホガニーを使用したりします。

補強材はガバガバになりすぎると意味が無いのですが、かといってピッタリすぎると、再接着したヘッドが剥がれる方向に荷重がかかっちゃうのでシビアです。「スッ」と入って「スッ」と抜けるぐらいが丁度いい感じです。
調整ができたら、接着します。写真では上下のみですが、この後左右からもクランプかけてます。

次はヘッドトップを補修します。

ヘッドトップの補強+面を整えるための材を貼ります。またまた接着です。ルーターでサラッと掘り、ノミで直線を出します。
弦を張った時にヘッドの割れ目を支点にして剥がれる方向に荷重がかかるのですが、この力に対して耐えられるよう補強を狙ってます。

マホガニーを削り出し、はめ込んでみます。
完全に平行ではなく勾配をつけて横からも叩けるようにしたのですが、いま投稿を作成してて、アリ溝掘ればよかったなーと思いました。
次回作業時の参考にします。写真は無いですが、この後接着します。

6弦側から1弦側に叩く感じです

接着後、成形して生地を整え補修が完了です。この後はタッチアップを行いました。
※写真ではトラスロッド部の加工が漏れてますが、このあとちゃんと成形しました。

ブリッジの剥がれも補修していきます。
ブリッジの大きさに対し1/3位の剥がれでしたので、ノリを流し込んで圧着し補修しました。
これがもっと広範囲に剥がれている場合や剥がれの進行が予想される場合は、一度ブリッジを完全にはがして面出しし、再接着します。

ブリッジ接着時に6弦が張られてますが、実はセットアップ時に剥がれが発覚しました。なのでこんな状況で写ってます。

タッチアップを実施し、弦張って調整して完成です。
もともとが古いギターなので、古ぼけた感じになるよう、つや消しっぽく吹いてます。

もちろんですが、ちゃんと弦を張れてます
補修部は暗めの色でぼかしてます。
全景です!!

すごく長くなってしまいましたが、作業完了となります。
引き渡し時に大変喜んでもらい、報われました。もしかしたらどこかのイベントに出演された際には、このギターでステージに立っていただけるのかな??見に行かないとですね!!(宣伝)

この他にもここに書ききれないノウハウを注入し、全力で作業させて頂いております。

今回のようなヘッドに角度が付いているタイプ(Gibson系)は、倒したりすると簡単に折れてしまいます。
破損したままで放置したり不完全な方法で補修すると、後々楽器として機能しなくなるだけでなく、手間もかかってしまいます。
ヘッド補修の具合とタッチアップの有無で作業料金が確定しますが、予算の都合でタッチアップを簡易で済まし値段を下げる等、対応は可能でございます。

もしお困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせ下さいませ。
よろしくお願いいたします。